【 消費者金融会社創業者一族 vs 国税が産み出してしまったルール=5年間ルール 】
今から約15年ほど前、”海外居住”を相続税対策として活用したケースにおいて、日本の代表的な消費者金融会社の創業者が国から約1600億円超の申告漏れ(国外財産)を指摘され、それを理由として巨額の追徴課税が行われた事件がありました。
当時は、現在の税制で規定されている条件(贈与人、受贈人ともに5年以上前から海外移住していなくてならない=5年間ルール)がなかった為、この消費者金融会社創業者側はそれを不服として国側を相手取って訴訟を行い、結果、国側が敗訴すると言う衝撃の結末となったのですが、これがどの様な経緯を辿ったのかを今回はご紹介します。
1997年:消費者金融会社元会長の長男が香港に移住。
1998年:元会長夫妻は、オランダに作った会社に所有株式約1600万株を譲渡。
1999年:オランダ会社の出資持分を香港に居住している長男に贈与。
2000年:日本で税制改正が行われ、日本国籍を有する非居住者に対して上記の”5年間ルール”を導入。
2011年:最高裁で国側の申し出を却下。消費者金融会社創業者一族が全面勝訴し、追徴期間に対する利子(約400億)まで付けて還付。
この係争の中での中心的な論点と言うのは、常にこの長男の「住所」でした。最終的には香港での生活実態があったと言う主張が認められた為に国側は一敗地に塗れる形となるのですが、この居住実態を巡った双方でのやり取りは実に10年にも及んでしまったと言うのですからこれは驚き以外何物でもありません。
こうした事もあって今現在ではこの”5年間ルール”が厳格に適用されているのですが、(逆に言うと)この”5年間ルール”さえ充たす事が出来ればその後は該当する海外資産については”相続税を払わない状態”を作った上で、本人(受贈人)は日本に永住帰国をする事も可能です。
但し、受贈された側の人間が、将来次世代に贈与する側になった時には、再び同じ事(5年超の海外生活)を繰り返す必要があると言うのを視野に入れなくてはなりません。
↓ブログ村参加してます。応援よろしくお願いします!↓
関連記事
-
-
香港進出の為の基礎知識とは?
今回は香港進出をお考えの方々に取って必要となる基礎的な知識・情報をご案内したいと …
-
-
「金密輸対策」に本腰を入れ始めた財務省
昨年の11月初旬(2017年11月7日)、日本の財務省関税局はここ一年の間に急増 …
-
-
何故、香港金融業界で働く選択する理由があるのか?
金融業界人にとって『香港』と言う都市は非常に魅力的にその目に映る場所であり、デモ …
-
-
株式売却の落とし穴
日本に恒久的施設を持たない法人は、通常は日本税制から見て“圏外”と考えられる傾向 …
-
-
【香港ワンポイント -香港法人に日本の税金?】
【 質問 】 日本法人や日本の居住者が株主となっている香港法人の所得について、日 …
-
-
【タックスヘイブン対策税制 実体基準の判定について】
香港のような軽課税地域では常に日本の税法、特にタックスヘイブン対策税制の影響下に …
-
-
駐在者が知るべき税務用語
海外子会社に駐在となる方々にとってその赴任先は様々です。 古くはその主流であった …
-
-
中国と日本の課税方式の違いとは?
中国で事業活動を開始する際は様々な点を周到に用意する事が肝要です。 しかしながら …
-
-
香港マカオへの渡航制限状況
※2020年11月25日の情報を公開しております。 >記事はこちら 2020年9 …
-
-
国が違えば選ぶ傾向も違う?日本と中華圏(香港&中国)の投資について-1
昨今、日本自身が“クールジャパン”と言う動きを官民で行なって来たこと等も影響を与 …
