【 敵対的買収劇がもたらしたもの-2007年ブルドックソース事件とは? 】
2007年5月中旬に突如発生した企業買収を巡るこの事件、米系投資ファンド会社スティールパートナーズによる日本の中小企業、ブルドックソース株式会社買収劇の顛末は、その後、外国の投資家の意欲を著しく減退させたケースとして今も語り継がれています。
この事件の一部始終を要約しますと、2007年5月18日に投資ファンド会社のスティールパートナーズ・ジャパンが東証2部上場企業であるブルドックソース株式会社に対して公開買付け(TOB=Take Over Bid)する事を発表したことでスタートし、これをブルドックソース側が『敵対的買収』であるとして応酬した事によります。
そして同年6月7日、同社の取締役会はこのTOBに対して”買収防衛策”を発表しました。
この買収防衛策の内容と言うのは、何と(TOBアナウンス以前の段階で)同社株を既に10%強所有していたスティールパートナーズだけを”除く”他の株主達に対して「新株予約権無償割当て」を発行すると言うものだったのです。
当然こうなるとスティールパートナーズも黙ってはおらず『株主平等の原則』を持ち出し抗戦を宣言しました。
その後も両者はお互いの主張を曲げなかった為に最高裁にその決を委ねる形となった訳ですが、(最終的に)最高裁はこの米系ファンド会社の訴えを却下する判決を言い渡しました。
ここまで書くと単に(日本企業がこの敵対的買収策を仕掛けた外資を見事駆逐した)と喜ぶ向きが出て来るのは分かるのですが、よくよく考えて見て行くと大きな問題が横たわっていることに気が付きます。
それは国の司法上、最も権威があるとされる最高裁ともあろう機関が、株で利益を求めて売買する行為そのものを『悪』と捉えてしまったところにあります。
古今東西、世界中の株式市場で問われる事と言うのは、常にその売買の”やり方”が正当的であるか否かでした。インサイダー取引などが禁止されているのもそうした原則が根底にあるからです。
ところが日本(最高裁)は、買い手側の”やり方”には一切フォーカスせず、その代わりに”意図(=マネーゲーム)”を問題視、結果として(適格でない)とこじ付ける事でスティールパートナーズの訴えを退けてしまったのです。
こんな馬鹿馬鹿しいロジックが通用してしまう国(市場)では到底”商売など出来ない”と外国投資家が思ってしまっても不思議ではありません。実際の話、日本が世界の『国際金融センター』から没落して行ってしまった理由のひとつには、こうした自国企業保護=甘えの構造の正当化が原因と言えなくもないのではないでしょうか。
何故ならこれが外資ではなく、仮りに日本企業同士のやり取りだったとしたら果たしてこう言う結末になっていたのか?と言うことが甚だ疑問だからです。
関連記事
-
JETRO分析資料からみた香港における「スタートアップ」事業の近況
定期的なリサーチ資料として各産業界からも重宝されているJETRO(ジェトロ/日本 …
-
【平成27年度税制改正大綱~まとめ】
昨年12月30日に平成27年度の税制改正大綱が発表されましたのでポイントを纏めて …
-
海外で利用されている節税方法を国内法人に使用した場合
香港は場所柄、多くの国の方々が自国の課税負担との比較の中で節税を目的とした相談が …
-
【 消費税とマイナンバー、今後の絡み 】
既に周知されているように、2017年4月以降、消費税の税率が8%から10%に引き …
-
日本の「ワクチン検査パッケージ制度」に香港のワクチン接種は有効か?
昨今では、日本のみならずアジア諸国を中心として新型コロナウィルス感染症に対する対 …
-
何かと面倒な、海外税務の対応について
毎年日本では税制大綱なるものが年末に掛けて大枠を決定し、年明けに正式発表、そして …
-
海外子会社の経営管理をサポートする際の移転価格上の判断について
経営管理サポートを海外子会社に対して提供する場合の注意点と言うものは何でしょうか …
-
【海外にペーパーカンパニー設立(投資目的用)する際の留意点】
海外投資目的で香港やオフショア・海外に会社設立される方々にとって留意すべき点は幾 …
-
外国人も絡む、日本の健康保険に関した扶養親族要件の改正
香港を含んだ諸外国では日本で言う「健康保険制度」が整備されていないところも多々あ …
-
【マイナンバー(2)海外居住者取扱いと個人番号カード】
◆海外居住者の取扱いについて マイナンバー制度施行となると、その対象となられる可 …