香港法人の従業員解雇について
香港の雇用条例においては、従業員が次の事由に該当する場合、雇用主は雇用契約に基づいて事前通知を与えるか、
もしくは代通知金の支払をすることなく、「懲戒解雇」の形で従業員を解雇できると定めている。
・故意に雇用主の合法的かつ合理的な命令に従わなかった場合。
・不正行為があった場合。
・詐欺行為、忠実でない行為が判明した場合。
・習慣的な職務怠慢があった場合。
但し、懲戒解雇は極めて厳しい処分とされているため、
・従業員に深刻な責(犯罪行為等)がある場合
・度重なる警告の甲斐なく、一向に改善されなかった場合
かつ、このような行為が「職場において発生」した場合に限られる。
従業員が「職場以外」で犯罪に関与したため、刑事事件の被告になってしまった場合の解雇については、事前通知を与えるか、
もしくは代通知金を支払う「一般解雇」の形で解雇を行わねばならないので、注意が必要。
もし、刑事事件の被告となった従業員に対し、事前通知を与えるか代通知金を支払わずに解雇してしまった場合、従業員には
代通知金の支払を求める権利があるため、後日釈放あるいは出獄した後で、従業員から支払を求められることになる。
※必要な事前通知期間の長さや代通知金の金額については、従業員との間で締結している雇用契約に従って決定されるが、
もし書面で雇用契約を締結していない(口頭など)場合には、香港雇用条例の規定に従って決定することになる。
なお、雇用期間中に消化できなかった代休や年次有給休暇分の給与については、解雇の理由を問わず、
解雇日から7日以内に従業員へ支払う義務がある。
もし7日以内に支払えなかった場合には、さらに利息をつけて支払うものとする。
解雇時に雇用主から支払われるべき賃金は、下記の通り。
後で紛争になるリスクを減らすため、「支払内訳リスト」を作成しておき、
支払時には労使双方が署名で確認するのが望ましい。4
・未払いの給与(あれば)
・代通知金(事前通知を与えない即時解雇の場合のみ)
・未消化の年次有給休暇
・未消化の代休買取分(あれば)
・雇用契約に定めるその他の福利(あれば)
雇用主が故意、あるいは正当な理由なく上記の全部もしくは一部の支払を怠った場合、従業員が香港当局に苦情を申し立て、
刑事事件として立件され有罪判決が出れば、最高で35万香港ドルおよび懲役3年が科される可能性がある。
引用:香港労工処ホームページ「雇用条例ガイド」第八章 雇用契約の終了
http://www.labour.gov.hk/tc/public/pdf/wcp/ConciseGuide/08.pdf
(中国語繁体字版)
http://www.labour.gov.hk/eng/public/wcp/ConciseGuide/08.pdf
(英語版)
関連記事
-
-
香港での人材を採用する際に留意しなくてはならない“常識”
会社にとって「人材」と言うものは、国や地域が違っても、重要であることに変わりはあ …
-
-
【タックスヘイブン対策税制 実体基準の判定について】
香港のような軽課税地域では常に日本の税法、特にタックスヘイブン対策税制の影響下に …
-
-
香港の税務申告制度とは?
やや時期が過ぎてしまっているタイミングとはなりましたが、今回は香港の税務申告につ …
-
-
2019年9月の法人設立個別相談会のお知らせ
みなさま、こんにちは。CCM香港スタッフです。 CCM香港では定期的に香港法人設 …
-
-
香港人にとっての「日本」とは、如何なる存在なのか?
香港では「日本」が“溢れている”と言っても過言では無いでしょう。街を歩けばそれこ …
-
-
【コーヒーブレイク】 日産を襲った衝撃、カルロス・ゴーンの逮捕劇についてー1
11月19日、既に世間一般でも周知の通り、日産自動車の会長であるカルロス・ゴーン …
-
-
国税庁が行なった租税条約に基づく情報交換事績の公表
国が推進している重要な施策のひとつに外国との租税条約と言うものがあります。これか …
-
-
不動産熱が再現?香港の投資家の思惑の背景とは?
香港のメジャーな英字新聞である「サウスチャイナ・モーニングポスト」(電子版)の報 …
-
-
海外で使用するお土産って消費税は免除?
海外赴任が決定し、今まさに“これから出国“と言うような方々の中には、赴任先でこれ …
-
-
国際金融都市で起こる動乱
ひょっとしたら今回の「逃亡犯条例」の改正案が可決されてしまうことで香港が香港とし …
- PREV
- 香港における慈善機構の設立について
- NEXT
- 香港における破産について