【 出国税(海外移住税)についての考察② 】
【🔶出国税の申告納税の時期と時価の算定時期】
出国税の申告納税の時期と時価算定の時期は、納税管理人を定めて届け出た場合と納税管理人を定めない場合とで異なります。
① 納税管理人を定めて届出した場合
対象となる有価証券等の時価は、その海外出国日を基準として算定し、申告納税の期限は翌年の3月15日となります。
② 納税管理人を定めずに海外転出した場合
国外転出予定日の3日前の時価で有価証券等の価額を算定し、出国の日までに申告納税する必要があります。
この場合、3日で所得税の確定申告書を作らなければならないことになりますので、出国前に十分な準備をしておく必要があります。
【🔶5年以内に帰国した場合の対応】
5年以内に帰国した場合は出国税の還付を受けることができます。但し帰国日以後4か月以内に更正の請求をする必要があり、その為には出国時に提出した申告書の控えや有価証券等の明細が必要となります。
還付請求ですが、出国時から帰国時まで継続して保有している有価証券等に係る部分が対象となり、還付金額は納付した税額が限度となりますが、逆に請求をしない場合はその有価証券の取得価額、また譲渡した際の原価は出国時に申告したときの価額となりますので、ケースによっては有利となるような場合もあります。
【🔶出国税の猶予制度について】
出国税については納税の猶予制度があります。
①納税管理人を定めて届け出ること
②所得税相当額の担保を提供すること
③出国中の各年末に財産の残高について届け出ること
とされています。
上記の②の担保提供ですが、ここで担保となる資産と言うのは、不動産、国債・地方債など、税務署長が”確実”と認める有価証券、や(保証人の)保証などとされています。出国時に帰国予定で納税資金がなく有価証券等を処分したくない場合には、納税の猶予制度を活用するとよいことになります。
この納税の猶予は現在5年間とされていますが(場合によっては)10年まで延長する事ができます。猶予期間内に帰国した場合には、やはり更正の請求を行うことにより、継続保有分に係る当初申告額について取り消しとなります。
一方、猶予期間が満了した場合には満了時に猶予されている所得税を納付しなければなりませんが、満了時に対象有価証券等の下落している場合には、更正の請求により下落分に相当する所得税額の減免が受けられるとの事です。
■あわせて読みたい■
【出国税(海外移住税)についての考察①】
関連記事
-
-
今後起こってくる税制改正の論点
先の衆議院選挙は「希望の党」などの台頭が期待されるなど新興勢力の勢いの影響で自公 …
-
-
【平成27年度税制改正大綱~まとめ】
昨年12月30日に平成27年度の税制改正大綱が発表されましたのでポイントを纏めて …
-
-
国外財産調書、第2回目の提出数は?
国外財産調書、第2回目の総提出件数は提出は8,184件 国税庁は2015年10月 …
-
-
超富裕層に対する課税強化体制
毎年、課税強化に勤しむ我が国の税務局ですが、どうやら来年以降もその手綱を緩めるこ …
-
-
海外に何らかの支払いをする時に重要なこと
日本で全てのビジネスが完結するのであれば、全く考慮に入れる必要がないと言うタイプ …
-
-
高層マンションの固定資産税の見直し
マスコミ各社の報道によりますと、政府は、高層マンションの固定資産税について、これ …
-
-
【 世界消費税ランキング 】
日本も消費税が5%から8%へと上昇し、そして2017年4月にはとうとう大台の10 …
-
-
不動産熱が再現?香港の投資家の思惑の背景とは?
香港のメジャーな英字新聞である「サウスチャイナ・モーニングポスト」(電子版)の報 …
-
-
新型コロナウィルス対策:『追加支援策』に見る香港と日本の違い-2
与党の一方である公明党の山口代表が4月15日、自民党安倍晋三首相に対して新型コロ …
-
-
【 国籍離脱・海外移住の意味 】
日本国憲法では、日本人は外国移住や国籍離脱の自由が認められています。 昨今の(国 …
- PREV
- 【 出国税(海外移住税)についての考察① 】
- NEXT
- 【日本の税務調査の基礎知識 (1) 】