FATCAとHSBC
FATCA…日本の皆様にとってはひょっとしたら聞き慣れない言葉かも知れません。
これは米国の国税局(=内国歳入庁 、或いは” IRS”) が2013年1月に発表した、米国人を対象とする”租税回避行為の防止”を意図する法のことを言います。
日本語での正式名称は、”外国口座税務コンプライアンス法”(英語ではForeign Account Tax Compliance Act)と言い、これが今や米国人・米国企業だけの枠に収まらなくなり、その影響が世界中に拡大して来ております。
この法は、”米国源泉”の資産(米国債や米国企業株式など)から得た利子・配当などを外国金融機関の口座内に溜め込むことで租税回避を試みる米国人に対して、外国金融機関側に圧力を掛ける事により、自発的(と言うか、半ば強制的に)にその内容をIRSに報告させるというものです。
勿論、銀行などの金融機関側やその口座所有者側(米国企業や米国人)にはYesかNoかの選択肢は与えらることになりますが、”非協力的”(つまり情報提供拒絶)とIRSに判断されると厳しいペナルティーを課されることを覚悟しなくてはなりません。
以下、ポイントとなる本法の内容:
①米国外の外国金融機関に対して米国源泉の利子や配当、譲渡対価などを対象に30%源泉徴収が行われる。
外国金融機関はIRSとFFI(外国金融機関)契約を締結し、口座保有者の情報をIRSに報告すればこの源泉徴収は回避できる。
②口座情報上で米国人であることを示す兆候がないかどうかの確認を行う事がIRSより求められる。この段において、この手続・要請に従わない顧客には30%の源泉徴収が行われてしまう。
③パススルー支払(他の金融機関を通じて間接的に米国資産に投資し配当などを受け取る)ケースにも30%の源泉徴収することを求められる。
こうした米国発の租税回避防止法が巻き起こした火種は、その後、新たな領域へと飛び火しました。結論としては、今現在、日本人にとってもこの問題は決して”対岸の火事”あると言い切れない状況へと発展してしまったと言えます。
事実としてこのFFI契約を締結している香港などの銀行にも影響は及び始めており、その代表格であるHSBCも(2014年7月1日付けとして)この度、自社ウェブにこの件に関する所見とそのインパクトを短く掲載し始めました。
つまり、結局のところ”米国人相手”とは言いながらも、米国資産に投資する企業や金融機関、またそれを介して投資する個人等々…こうした複雑な流れを明らかにする過程上、金融機関はこれを口実に今まで以上に顧客に情報開示を求めることが予期されますし、提出された情報そのものが四方八方から徹底的にチェックされることになるのは明らかです。
従って、口座開設などはこうした前提下での手続になると言う事を、今一度、日本の皆様には理解をされた上でその備えを行う事が必要です。
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