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シンガポール-日本間で発生した増資引受に係る贈与の認定事例(裁決事例から)

<概要>
日本の居住者Aさんは、自身の父と兄の3人でシンガポール法人を設立し、それぞれ3分の1の株式を保有していました。そしてAさんとAさんの兄は、シンガポール法人の株式それぞれ10万株を一株当たり1米国ドルで引受けした(尚、父親は株式の引受けはしておりません)ところ、税務当局は引受単価が増資前の1株当たり純資産価額に比べて低廉であるとして、新株の引受けをしなかった父親からAさん及びAさんの兄に対して贈与があったと認定し、贈与税の課税処分を行いました。


この課税処分を不服としたAさんは、これに対して相続税財産評価通達の適用誤り(新設3年目の特例の不適用)を指摘し課税処分の全部取消しを求めて審査請求をしたところ、国税不服審判所は、課税処分自体の違法性に関してはAさんの主張を認めず、課税標準額の過大部分について一部の課税処分を取り消したと言う事です。


ここで、上記に係る税法(=相続税法*)を当て嵌めて見ると以下の通りです(*相続税と贈与税は基本的には同じ軸で考えられていることを留意)。

(1)法令の規定、通達の定め
相続税法第9条では以下のように規定しています。

「第五条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該利益を受けさせた者から贈与(当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。」


そして、この規定の解釈の一つとして、相続税法基本通達9―2があります。

《 以下、相続税基本通達9―2 》
同族会社の株式又は出資の価額が、例えば、次に掲げる場合に該当して増加したときにおいては、その株主又は社員が当該株式又は出資の価額のうち増加した部分に相当する金額を、それぞれ次に掲げる者から贈与によって取得したものとして取り扱うものとする。この場合における贈与による財産の取得の時期は、財産の提供があった時、債務の免除があった時又は財産の譲渡があった時によるものとする。

(1) 会社に対し無償で財産の提供があった場合
当該財産を提供した者

(2) 時価より著しく低い価額で現物出資があった場合
当該現物出資をした者

(3) 対価を受けないで会社の債務の免除、引受け又は弁済があった場合
当該債務の免除、引受け又は弁済をした者

(4) 会社に対し時価より著しく低い価額の対価で財産の譲渡をした場合
当該財産の譲渡をした者


(2)本件への当てはめ
本件は、低廉で株式の引き受けをしたものであり、上記の相続税法基本通達9-2の定めに直接当て嵌まるものでありません。しかしながら同通達は、同族会社に対して低廉譲渡をすることにより、それを低廉譲渡者から株主に対して利益の移転があったものとして贈与税を課税すると言うのが趣旨です。

つまり、同族会社の関係者と株主間又は株主間でこうした種の利益の移転があった場合、贈与税の課税対象としていると解釈する部分が多分にあり、その意味では税務局がこの方向性での判断をするのは至極当然の動きであったと言えるかも知れません。

なお、本件の採決では課税標準額等についての情報が非開示となっているとこともあり課税標準額の一部取消し額が一体幾らであったのかは明らかではありませんが、取消後の加算税額自体に変動がないことからすると、その取消の額と言うのは非常に少額であったものと考えられています。

以上、同族会社に対する贈与や低廉譲渡が、当該同族会社の株主に対する贈与があったものとされて贈与税の対象となると言うパターンは、(特に相続贈与税に携わる)専門家の間では常識的且つ典型的な事例のひとつですが、本件は、同族会社の株式の低廉発行を"みなし贈与"と認定した数少ないケースであり、同時にまた、これが国際間(シンガポール法人と日本在住のAさん等)で発生したと言う意味ではかなり特殊な事例の範疇に入るものであったと言えるでしょう。

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