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総合的に判断しなくては間違える『国外財産調書制度』への対応

更新日:2019年04月09日

国税庁は、今年の1月25日、平成29年分の国外財産調書の提出状況と調査結果を一般に公開しました。その提出の状況は以下のものとなります。

<国外財産調書の提出状況と調査結果>
(1)提出状況
1.提出枚数 9,551枚
2.総資産額 3兆6,662億円
【内訳】
有価証券:1兆9,252億円
預貯金:6,204億円
建物:4,038億円
貸付金:2,806億円
土地:1,449億円
その他:4,014億円

(2)調査結果
所得税や相続税の申告漏れ等は以下の通りです。

加算税の軽減措置対象金額※1 45億7,467万円
※1 国外財産調書に記載された資産やその収益の申告漏れ

加算税の過重措置対象金額※2 51億1,095万円
※2 国外財産調書不提出又は記載漏れの資産やその収益の申告漏れ

【国税庁見解】
国税庁は「国外財産調書の提出を見込まれる方や記載内容に不備がある方に対して文書照会等を適切な提出を確保すること通じて国外財産に係る課税の一層の適正化に努めていく」としています。

【所見】
(1) 提出状況について
提出枚数9,551枚、総資産額3兆6,662億円と言う数字について先ずその論点として存在することと言うのは、一体それが多いのか少ないのか?と言う点です。

ちなみに日本の対外総資産の残高と言うのは平成29年12月末時点で約1,012兆円と言われておりますので、それを分母として、この提出された国外財産調書の資産額を比較すると全体(日本の対外資産)の僅か0.36%程度です。

もっともこれは日本の対外資産の殆どが①国の資産(外貨準備など)、②日本企業による投資、③投資信託による投資が占めていると考えられますので個人資産が対象となる国外財産調書対象の資産がこの数値に対して多いのか少ないのかと言う判断は微妙なところであると言っても良いかも知れません。

(2) 調査結果について
1.加算税の軽減対象
相続税や所得税の申告について、国外財産調書に記載された資産又はその資産から生じる収益の申告漏れがあった場合には、加算税を5%軽減することとされています。このため、提出した国外財産調書に記載された資産について相続税の申告漏れ或いは、その資産の収益の申告漏れが45億円あったということになります。

基本的に国外財産調書を提出するような層の方々と言うのは税理士等のプロフェッショナルがついていると考えられていますが、国外財産調書に記載した資産については税務署側に既に把握されていると言う前提となりまですので、相続税で資産が漏れている、或いはその資産からの収益に係る所得税の申告がなければ強力な税務調査の対象になることは明らかです。

このため通常の状況下におけるプロ(税理士)の判断では、相続税や所得税の申告に際して提出した国外財産調書を確認することは基本中の基本と考えられる為、これは恐らくクライアントと税理士の間の連絡不足等の"ヒューマンエラー"が原因となっているのかも知れません。

2.加算税の加重対象分
通常、国外財産調書を提出していない場合や国外財産調書に記載されていない資産については、相続税の申告漏れや所得税の収益の申告漏れがあった場合、それに対しても加算税が5%加重することとされています。

また、相続税の重加算税対象となるケースの中には資産の所在地が遠隔地であることを理由として申告しないような場合も過去事例として存在している為、(国外財産についても)その存在を知りつつ申告しなかった場合には重加算税の対象となることは必至です。

更に、国税庁は海外送受金に係る資料を収集しており、日本国内に外国から送金があるようなケースでは確実にその情報が(税務署側に)"把握されている"と考える方が身の為であると言えます。この背景は香港を筆頭とした海外の金融機関の口座情報の交換制度が既に開始されているからであり、"(日本国内に送金しないから)税務署は分からないだろう"と考えて"申告しない"とすることには大きなリスクを内包していると言うことです。


何れにしても海外資産に関した課税を巡る判断と言うのは一国単位で行うのは非常に危険であり、双方の状況をしっかりと確かめた上での総合判断を行うことが何よりも肝要です。

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