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中国で渦巻く"香港不要論"と、実際に表出している幾つかのこと

更新日:2019年06月28日

今回の「逃亡犯条例」に端を発したデモと言う動きと言うのは、実は香港で5年前に起こった「雨傘運動」の時の状況と奇妙に一致しているところがあります。それは(両方とも)世界的に捉えても大きな国際間会議の前であった(ある)と言うことであり、穿った見方をすると何等かの政治的な思惑を持った大国等が、実際の直接交渉を前にて"仕掛けた"のではないかと憶測されている向きもあります。


「雨傘運動」が起こった2014年(9月)の時は、それから2ヶ月後の11月に北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)が迫っていました。そして今回の「逃亡犯条例」についても6月末に大阪で予定されているG20(世界主要国首脳会議)が設定されていたと言う流れです。

勿論、これらは全くの"偶然"であるとも捉えられますが、中国国家主席の習近平氏を"ターゲット"としている国々(特に米国)にとってはこの「香港デモ」が暴動等に発展するようものなら、世界中の世論を背に、中国に対するアドバンテージを有した上での交渉も可能であったかも知れません。


香港では昨年就任したばかりの行政長官であるキャリー・ラム氏(林鄭月娥)が今や香港市民から辞任を迫られるような状態であり、この香港政府の後ろ盾となって居ると見られている中国共産党(=習近平氏)に対する反感も、上記のキャリー・ラム氏と同様も相当な不信感を募らせているのは想像に難くありません。


しかしながら、このように強気に打って出ている香港ではありますが、果たして中国が現在の香港に対してそれだけの評価価値があるのかどうかについてはまた"別のものである"と考えて置いた方が良さそうです。


それは具体的には以下に挙げる3つのことから推測することが可能です。

1.英国の衰退
元々、香港と言う地域を「アジアの先進地域」たらしめていた最たるものが、ヨーロッパ随一の金融センターであるロンドンでした。その域内にある金融中心地であるシティと直結していたことが香港をここまで引き上げて来た原動力のひとつであり、返還当初は中国(北京)も多大なる期待を寄せていました。

しかしながら、こうした動きは2016年、英国のBrexit(EU離脱)が決まると一変し、その結果ロンドンに紐づいていた香港の金融センターとしての地位が急降下してしまったことは否めません。


2.深センの台頭
昨年の深圳市のGDP(域内総生産)は、前年比7.6%増の2兆4221億9800万人民元であり、香港は、前年比3%増の2兆8453億1700万香港ドルでありました。これを2018年の平均為替レートを適用すると、2兆4000億9800万人民元になり、とうとう追い抜かれてしまうこととなったのです。

長年、香港は深センを「格下」扱いして来ていただけに、香港市民の間でこの「深圳ショック」は予想以上に大きなショックとして捉えられていた向きがあります。


3.中国人観光客による「香港軽視」
香港政府が纏めた統計上の数値では昨年、香港を訪れた域外の観光客の数が対前年比11.4%増の6510万人であったとのことですが、そのうち全体の78%を占めたのが、中国大陸からの観光客で、これは対前年比14.8%増の5100万人だったとのことです。


この数字だけ聞くと中国人観光客が増えて香港経済は潤っていると思えてしまうのですが、よくよくその内容を見て行くと彼等中国からの観光者の多くは香港を単に"トランジット"として利用しているだけであり、むしろ最終的なデスティネーションは日本や米国、或いは欧州と言った他国であることが判明しました。

つまり、香港としては"実が取れない"=スルーされているだけの話であり、逆に言うとそれだけ求心力が相対的に低下してしまっていることが見て取れるのです。


また、経済規模についても1997年に返還された時、中国と香港のGDP比は、5.4対1と言う比率(香港は中国全体の2割近くの経済力を占有)であったところが、22年経った今では37対1(対中比率:2.7%)にまで下降しています。つまり今や香港の経済力は中国全体から見ると極小の地域のひとつに過ぎず、故に「香港不要論」が湧き上がっていると言う訳なのです。


では本当に使い道がない程香港の立場は脆弱なのでしょうか?趨勢に対するひとつの答えとして香港を擁護出来る論点があります。それは"対台湾"と言う視点です。


台湾統合を切望する中国にとっては、香港との間に築いた「一国二制度」のモデルケースは成功させなくてはなりません。何故なら中国は台湾を第二の香港にしたいと言う気持ちがあると考えられているからです。故に配下の香港を"廃れさせない"ようにするのは必須事項であり、その為に様々な華南プロジェクトで香港を絡ませることに腐心して来ました。

言い方を変えるならば、将来の香港の姿と言うのは今の立ち位置(最先端の市場+成長路線の象徴)でなくなることは否めないとしても、相変わらずの金融・運輸等の実験場であることを幹として、中国国内比較として高品質な自由貿易市場都市としての変貌を遂げているかも知れません。生き延びる道のヒントとは、こう言うところに内包されていると言うのは如何でしょうか。

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