【海外にペーパーカンパニー設立(投資目的用)する際の留意点】
海外投資目的で香港やオフショア・海外に会社設立される方々にとって留意すべき点は幾つもありますが、その内のひとつである国内源泉所得範囲の認定は今後肝要となって来ます。
平成26年の改正で、この国内源泉所得の範囲について”総合主義”から”帰属主義”に変更となり、平成28年4月1日以後開始する事業年度から適用する事とされました。
この”総合主義”から”帰属主義”への改正と言うのは、外国法人の恒久的施設(PE)の所得に関するものです。恒久的施設とは、支店、事務所、営業所、工場など事業を行う上での”一定の場所”のことをいい、外国法人が、日本国内に恒久的施設を有して事業を行う場合には、日本の法人税が課税される事になります。
改正前の”総合主義”では、(例えば)日本国内に日本支店がある場合、日本支店を通じた国内所得のほか、日本支店を経由せずに、本社等が日本の居住者等を対象として販売した場合の日本での所得についても課税するというものでしたが、この点、”帰属主義”では本社が日本国内で販売した所得部分は含めないとの取扱いになります。
では、投資目的用として『ペーパーカンパニー』を海外に作った場合はどうでしょうか?
先ず考えなくてならないのは、この『ペーパーカンパニー』が一体どこで事業をしているのか?と言う事です。
『ペーパー』ではあるとは言え、何等かの”投資目的”に沿って事業を行っているのは事実ですので、そのロジックから言いますと必ずどこかに事業を行う「場所」が存在しなければなりません。
日本以外に事業を行う場所がないペーパーカンパニーの場合は、その会社の代表者や役員の住所等が”恒久的施設”に該当するとの認定を税務局から受ける可能性があり、そうなると日本で法人税の申告をする事が必要となるケースも考えられます。
また、香港など自国以外の所得が免税扱い(”オフショア・クレーム”と言います)となっているマーケットに投資用のペーパーカンパニーをお持ちの場合でも、日本に恒久的施設有すると認定された時点で(海外での)課税がなされていない所得については、日本の法人税の申告義務があるとされています。
例えば、香港法人を通じてシンガポール法人に融資をしている場合、シンガポールでは貸付金の利子に課税しないため、日本に恒久的施設があると認定されてしまうと、日本の法人税の申告義務が生じることになる、と言った具合です。
以上、海外法人を設立する際はこうした点もよく踏まえた上で、次の一歩を踏み出される必要があります。
ご質問等が御座いましたら弊社までご連絡下さい。
関連記事
-
-
外資系赴任者の社宅を巡る税務的判断
外国に本社を持つ企業が日本国内の子会社の業績に将来性を感じ取り、当初送っていた駐 …
-
-
政府機関が宣伝する香港の魅力とは?
ビジネス誘致と言う視点で政府機関の一部として公式に香港のプロモーションを行なって …
-
-
ここ数年から見る香港の将来
1997年に返還されて以来、香港は中国に対して一定の独立性の維持を約束されながら …
-
-
香港飲食業界への進出について
香港人の一般的なライフスタイルの中では「外食」と言う習慣は切っても切り離せないも …
-
-
これを知らないと大変?香港の雇用条例で気をつける点
古今東西、如何なる国やコミュニティーであってもそこには会社と(会社で働く)従業員 …
-
-
【中国−海外所得(タックスヘイブン=租税回避地)課税の強化徹底へ】
今年1月初旬に相次いで中国国内新聞紙上を飾った共通のトピックが一つあります。 そ …
-
-
【 世界消費税ランキング 】
日本も消費税が5%から8%へと上昇し、そして2017年4月にはとうとう大台の10 …
-
-
香港が纏う 『国際金融センター』 と言う評価軸
毎年春先に発表となる国際金融センターの順位ですが、これを調べる機関によっても順位 …
-
-
日本で3番目に大きな税務訴訟の事例となった「IBM事件」
企業側と国側の税金を巡る訴訟と言うのはいつの時代も熾烈を極めるものです。特に案件 …
-
-
増加する香港IPOを目指す日系企業
アベノミクスの失速などもその背景としてあるのかも知れませんが、冷え込んでいる東京 …
- PREV
- ご相談事例 (繊維系貿易会社のケース)
- NEXT
- 【APAとは何のことか?】