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移転価格調査は法人税調査とどう違う?その概要について

更新日:2017年10月24日

香港は中国にとって南のゲートウェイであり、中国返還の前後である1990年代後半から2000年代初頭にかけて多くの日本企業が中国マーケット攻略を念頭としてこの地に進出して行きました。

香港は英国統治時代から税率で非常に競争力のあるレートを提示(17%→16.5%→8.25%<一部>)して来ている等の背景もあり、依然として世界でも有数の金融センターとして認知されている市場ですが、同時に対中国ビジネス上、戦略的に重要なポジションを担う立ち位置として現在でもその価値は維持・継続しています。


上記のように、中国等でのビジネスが発展して行くとなると、徐々に発生して来る課題のひとつと言うのが今回のテーマである「移転価格」です。香港のような地域が低税率を維持すればするほど、世の常として高税率である地域や国(例:日本や中国)から利益を意図的に"飛ばす"行為が発生しがちになります。

この行為は、結果的に企業にとって内部留保出来る資金が"増加する"ことを意味しており、また対外的にも金融機関へのアピールなどに繋がったり、経営そのものにも余裕が出て来ることになるので経営者は(税務上は)"危ない"と知りつつも、この分野に手を染める方々も後を絶ちません。


さて、少々前置きが長くなってしまいましたが、この「移転価格」を巡る実際の調査と言うのは通常の法人税調査とはどのように違うものなのでしょうか?

先ず根本的に両者が違うところと言うものは、通常の法人税調査部門には移転価格調査官が居ないと言う点です。換言すると、両者は担当部署が全く分かれていると言うことなので、仮に法人税の税務調査で移転価格の指摘がなかったとしても、企業は(移転価格調査上では)全く安心出来ないと言うことになります。

また、移転価格の調査期間は通常の法人税調査期間と較べても長い期間(数ヶ月~1年)が掛かるのが常であり、その調査対象期間(="更正期間"と言います)は6年とされている点も相違点と言えるでしょう。


また取引規模が海外(海外子会社が一方の当事者になる可能性がある為)に及ぶケースが頻繁になるので棚卸し資産の販売取引や製造ノウハウなどの無形資産取引など、調査する対象が非常に広範になって行く点も留意すべき点です。

その為、一件あたりの更正金額も高額になるパターンが多くなる訳ですが、最近では徐々にその金額が"少額化"している傾向もあるところを見るといよいよ中小企業が税務局側の移転価格調査の"ターゲット"となりつつあると言う見方も出来なくはありません。


また現在、世界中の税務局ではBEPS(税源新色と利益移転)に対する包囲網を一斉協力して整備することに注力しており、こうしたデータベースが整った暁には、ある日突然、税務署から企業側に対して移転価格調査の依頼が今迄以上の頻度と精度でやって来ることになるかも知れません。


過去の事例に於いては、大企業がこの移転価格で"刺された"場合、税務当局による「更正」を不服として異議申し立てや相互協議に進むケースが多いと言う特徴があり、またこれらの手続には数年の期間を要するなど体力勝負的なものが中心でしたが、(財源的&人材的に)限られたリソースしか持たない中小企業にとってはこうした大企業が行うような対応を実行することは現実的には厳しいと言わざるを得ません。

そうなると一旦、目を付けられてしまうと"泣き寝入り"的な妥協を強いられる選択肢が濃厚となる為、結局は如何に事前予防策に取り組んで行くか?が焦点となって参ります。


以上、移転価格に関わる調査の一端をご紹介しましたが、この分野はそもそもその判断基準からして簡単では無く、場合によってはこれだけを専門に取り扱う税理士事務所への相談も視野に入れることもお薦めします。

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