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税務局が他国に依頼する「徴収共助」とは?

更新日:2018年10月10日

伝え聞くところですと、オーストラリアの法人税の税率は30%(一定の売上しかない小規模事業者には27.5%)であり、16.5%の香港は言うに及ばず17%のシンガポールの税率や中国の25%、或いは日本の法人税率(29.97%)にすら"遅れを取る"と言うような感に見えます。

ところが先月17日のマスコミ報道によれば、東京国税局は、上記のような高税率国であるオーストラリア居住者の贈与税に関わる件(贈与税の滞納)に於いて、両国間の条約に基づきオーストラリアの税務当局に「徴収共助」を依頼しオーストラリア税務当局による滞納者の預金差し押さえを行うことで約8億円の徴収が完了したとのことです。

なお、これまで日本の国税当局が他国に対して「徴収共助」を要請した件数と言うのは前述の件を含めて11件とされています。


これまで二国間で締結されている租税条約の多くには「徴収共助」に関する規定が設けられていますが、実際のところこの規定が具体的に実施・適用されるケースは"少なかった"と言っても良いかも知れません。しかしながら、多国間の条約である税務行税執行共助条約が2013年に発効して以降、「徴収共助」制度による滞納処分ケースが徐々に増えて来つつあるとのことなのです。

一般に租税債権を確定、徴収するためには以下の3段階が満たされる必要があります。

1)租税債権が存在することの情報の収集及び租税債権の額の算定
2)納税者に対する通知(更正・決定処分等の通知)による租税債権の確定
3)租税債権の徴収


日本国内であれば税法に定める国家権力の行使としての税務調査により、課税情報の収集、租税債権の算定が行われ、②算定された租税債権に関して納税者に書面での通知(更正、決定又か告知処分)により租税債権が確定し、③当該租税債権が滞納となった場合には、国税徴収法の規定に基づく国家権力の行使として滞納処分が行われることになります。


ところがこれを国際課税の場面を考えてみますと、日本の税務当局の税務調査や滞納処分は、日本国の国家権力の行使にほかならず、他国内での行使は(基本的には)困難が伴うと捉えられていました(※ 課税処分に係る通知に関しては国際法上、国家権力の行使とはされていませんので、従来から海外居住者等への更正・決定処分の通知は行うことができると考えられていました)。

考えて見ればそれは当然と言えば当然のことであり、こうした環境ゆえに国際課税の場面では税務当局は租税債権に係る情報の収集や滞納処分についてかなりの制限を受け、課税漏れや徴収不能といったケースが少なからず発生していたと考えられることになります。


しかしながら、冒頭のオーストラリアのケースや2017年9月を初回とした各国税務局による口座情報自動交換制度などを取って考えて見ると、近年、各国の税務当局は"国際的租税回避"に対して以前では考えられないほど積極的に共同でアプローチを行うことを図っていると言えるでしょう。

当局のこうした様々な動きが網の目の様に繋がって行くのは明白化しつつあり、税源浸食と利益移転に関する行動計画(BEPS=国際課税に対するルール付けの統一)や情報交換の強化が今後は一層顕著な形やケースとして一般の方々の目に触れることになって行くのではないでしょうか。


結論として「租税回避地域」として常に真っ先に挙げられる先のひとつである香港がその"例外"となることは想像出来ず、従って居住されている方々にとっても一層の「備え」は必要になるものと思われます。

「徴収共助」、世界的な"課税包囲網"がいよいよ我々の周りに対して稼働し始めて参りました。

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