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カルロス・ゴーンも使用した「オランダ」と言う国の特異性

更新日:2018年12月03日

まさに青天の霹靂(へきれき)とでも形容したら良いのでしょうか、日産自動車の会長であり、またフランスの大手自動車会社ルノーの取締役会長兼CEOであるカルロス・ゴーン容疑者が去る11月19日、東京地検特捜部の手により電撃的に逮捕されました(日産の会長職は11月22日に解任)。

現時点(11月26日)ではゴーン容疑者の身柄が拘留されているなどの状況もあり、本人側からの声明などがメディアにハッキリとした形で出て来ていませんのでどのような展開となるのかは分かりませんが、日産の最高経営責任者として陣頭に立った19年間に於ける功罪はこれからしばらくの間、マスコミ等にとって格好の"餌食"となることは間違い有りません。


では、本稿で取り上げる論点と言うものは何かと言うと、ゴーン容疑者の"罪状"に関する詳細について意見すると言うものではなく、ゴーン容疑者の命を受けて設立したオランダの子会社に関することです。

今から遡ること8年前の2010年、日産は資本金60億円を拠出しオランダに投資会社を設立しました。この会社の機能というのは、そもそもベンチャー企業に対する投資の実行と言う目的だった訳ですが、蓋を開けて見るとその"投資先"というのは(法人の所在地となるオランダを除くと)全てゴーン容疑者の所縁の国々、つまり生い立ちや人生に於ける重要な部分を過ごした場所(ブラジル、レバノン、フランス)だけに集中しているものと分かって来ました。

ここで問題として捉えられる論点と言うのは、このオランダの会社がこれらの投資対象国に所在する企業への投資を行なっていたと言うのではなく、単に不動産の購入を行うのみに留まっていた(?)からです。


実際、各国の税務当局からすると、このオランダと言う国は、世界的な企業が挙って行う脱税ギリギリの特殊スキームの温床と考えています。何故ならアマゾンやグーグル、或いはアップルと言った欧米を代表する企業達は一様にこのオランダを咬ませたスキームを構築することで長年、税務局との戦いを繰り広げて来ましたし、依然として係争中の案件もある程です。


では、オランダが提供する「税制」というのは一体どのようなものなのでしょうか?

例えばオランダの法人税を取り上げて見ると以下の通りとなります。
(1)課税所得20万ユーロ未満の法人税は20%
(2)上記1の20万ユーロを超える課税所得については25%

一例として香港の法人税に掛かる税率を上げると、(香港では)16.5%が法人税となりますので上記は一見、それ程旨味があるようには見えません。しかしながら、オランダには企業がある一定の条件を満たすと、資本参加免税と言う制度適用のチャンスがあり、これを受けると親子企業間で行われる配当や利子、ロイヤルティーに関する優遇措置(以下)が施されることになるのです。

a)税率が配当金額の5%を超えなくなる。→配当金で100万ドルを受け取るような場合、通常の課税率が上記の25%ではなくなる事を意味し、結果的に5万ドル以下の納税でOKとなる。

b)議決権の50%以上に相当する株式を所有する法人の場合は無税。→つまり該当法人を日産が100%出資し、同時に議決権を50%以上(通常は100%)保有の場合、課税は無し

c)金融機関等の利子支払いも免税→PL上での受取り利子については(税務上では)外すことが可能。

d)他の締結国にある法人に対して支払うロイヤルティーは免税→香港などの場合は、支払いロイヤルティーについては4.95%の課税が掛けられるがオランダは無し。

カルロス・ゴーン容疑者の真意は何処にあるかは分かりませんが、オランダを使用したことと、日産がこれを容認したことについては驚きを禁じ得ないと言うのが正直なところです。

内部監査からの通報によって今回の事件は表出したと言われていますが、意味不明とすら言える投資会社の動きを糾弾して来れなかった(或いは出来なかった)と言う点においては日産もゴーン容疑者同様、同罪であると言うのは間違いでは無いのではないでしょうか。

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