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何故、習近平は香港を"呑み込む"ことを、ここまで躊躇しているのか?

更新日:2019年09月20日
香港を単なる"金融都市"としてだけしか見ないでいると実は非常大切なコア=芯の部分を見落としてしまうことになります。この「コア」は一体どの段階で出来たのかと言うと1997年7月1日の香港返還時まで遡らなくてはなりません。この返還時、中国政府と英国政府の間では「一国二制度」の50年間の維持と言うものを約束することになりました。

つまり、ひとつの国(中国)でありながら、2つの全く異なった制度が存在すると言うことを意味する時代がこの時から始まったと言うことなのです。また視点を変えるとこの「一国二制度」に於いては香港は英国が作った法律下でその後50年間は"保護される"と言うことでありました。

言うまでもなく、世界の金融ルールの中心と言うのは今現在でも英国の"シティ"が作っていると言っても過言では有りません。例を挙げると欧州のECB(欧州中央銀行)が発行する債券等もその法律的根拠と言うのはこのシティの活動を構成する下地=英国法になっていますし米国の金融ルールに関することもこのルールを中心に置いているのです。

つまり、金融に関しては「英国法」と言うのが世界の共通言語であると言える訳です。それに対し中国の法律はあくまでも中国独自のものであり、グローバルスタンダードの見地から見ると全く合致する類いのものではありません。


既にご存知の方もいらっしゃると思いますが、中国では為替すら自由化出来ていないのが実情です。また資本移動の自由も無く、そもそも国際法に則った金融ルールと言うものが存在しておりません。共産主義の中でルールを勝手に設定して運用しているだけなのですから、この(中国)ルール下で他国の企業や他国の銀行が活動・運用した場合、平等な競争が約束された市場では無くなる可能性が高くなります。

ところが香港では先の英国法によって金融システムが担保されているので公正な取引が保障されていると言えます。例えば香港は香港ドルと言う独自の通貨がありますが、これは香港の宗主となった中国の通貨:人民元とは全く別の通貨として成り立っていますし、この香港ドルは「ドル預託通貨」と世界的にも認知されている為、民間の銀行、例えばHSBCやスタンダードチャータード銀行、中國銀行と言った銀行が所有している米国国債を担保として発行されています。

つまり、言い換えると香港ドルの"裏付け"と言うのは米国国債、米国ドルであると言う解釈に繋がって行く訳です。一方で中国人民元はあくまでも中国の持つ資産を担保に発行していると言った以外の裏付けがない通貨となり、印象としては全幅の信頼を置けないポジションのものであると言っても致し方がありません。

香港ドルは(前述の通り)米ドルと同じ役割を持っている為、世界各国から中国がモノを輸入するような場合は香港ドルで海外からモノを買い、そしてそれでモノを作って輸出すると言う構造が成り立っていました。

仮に今後、もし中国が乱心して「一国二制度」を破壊し自分の統治の下に置いてしまうような愚挙を行った場合、必然的な反応として世界の金融機関はこの香港に見切りを付けて出て行くことになるでしょう。

そうなった際の混乱と言うのは中国だけが"ババを抜く"と言うことになってしまい、何のメリットも享受出来ないのは火を見るよりも明らかです。


因みにIPO、所謂、ドル建ての資金調達の一例に取って見ても香港市場では世界の約3分の1近くのボリュームの取引を抱えています。中国企業も他の外国企業同様、海外からモノを買ったり進出するような場合は外貨が必要になって来ることになりますが、米国政府が既に中国政府系の企業に対してIPOを認めなくなってしまった影響もあり、中国に取って外貨調達手段の砦が香港となっていました。

しかし例の「逃亡犯条例」に端を発した今回の執拗なデモと衝突によってこの市場の将来に悲観的な見方が顕在化しつつある現在、外貨調達そのもののハードルが高くなってしまっていることは否定しようが無くなって参りました。

あのアリババですら起債を棚上げしているような状況でもある為、習近平は香港の今後の処遇上の判断を間違えると中国全体に対する金融面での大きなダメージを与えてしまうことが現実的になって来ているのです。

故に、安易な強硬手段へのステップは進めない...そんなジレンマに苛まれていると言うのが真の状況と言えるのかも知れません。

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