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「買収形式」で海外進出する際に注意をしなくてはならない税務上のスタンス

更新日:2021年08月23日

コロナ禍の状況が依然として世界中を席巻している状況でもある為、一般的には「海外進出」と言う言葉に対して"距離"を感じられる方々は多いでしょう。香港などは、このパンデミックと言う要素の他にも政治的な混沌(=中国による「国家安全維持法」の影響)もある為、(現実的な状況は兎も角)より一層、イメージ的に当地経由のビジネスに不安を感じる層が存在するのは否定出来ません。

しかしながら、そうした面での"膠着"や"足枷"があるからこそ、より確りとした準備が出来る機会であると言うのも一理ある考え方ではないでしょうか?


こと『海外進出』というものは、「自社進出型」が依然として主流を占めるのは変わらない事ではありますが、最近では「クロスボーダーMAという言葉もマーケットで定着してきたという側面も含めると、そのやり方についてはかなりの"幅が出て来た"と解釈も出来ます。


ひと言で申し上げて、『海外進出』というものを確実に"一定(以上)の成功"に導く効果的な手段というのは「買収形式」を採用することです。自社進出の場合は、何から何まで"自社"という狭い括りの中での準備に明け暮れる閉鎖的な面がある為、どうしても想定外事項に対する準備は不十分になりがちです。例えばリサーチひとつ取っても極めて単一的な面が出てしまうのは否めず、これが(場合によっては)進出ビジネスそのものの根幹を揺さぶってしまうようなことに繋がるケースもあります。


この点、「買収形式」の海外進出というのは当地での既存企業を飲み込む形である為、一定の顧客層は既に現地で構築されており、あとはそのレールに一体何を"乗せて行くか?"と言うことが中心となります。

ただし、この「買収形式」で落とし穴になると言うのは、こうした攻撃面(販売等)ではなく、むしろ守備面(例:人材、税務・会計、法律等)といっても良いかも知れません。


例えば、こうした子会社を取得をする場合は"株式の購入"という面が最初の段階で出て来ますし、取得価額と言うのは外貨建ての価格を円換算したものとなるのが普通です。しかしながら、こうしたことに絡む"付随費用"については(子会社の)株式取得価額に含まなければならないと言う点や、これを損金として扱うことができるかどうかには注意が必要となって来ます。

場合によってはこの"付随費用"を子会社株式の取得価額に含めることで損金参入タイミングがかなり遅くなってしまったり(例:子会社株式を売却するまでに損金に参入できないことになってしまう等)、場合によっては半永久的に(損金参入が)できないケースもあり得るのです。


また、現地企業を買収する場合、買収時点で買収対象会社が既に存在し、事業活動を営んでおり、過去の債権債務関係を有しているかどうかと言う点もポイントとなって来ます。


よって、こうした問題を事前に除去する為には、現地企業買収前の段階で適切なデューデリジェンス(以下、"DD")を実行し、潜在的なものも含めて債務(租税債務の可能性や発生可能性の高い税務リスクを含む)の洗い出しを行うことがとても重要となります。これは外資100の現地企業を買収するケースであっても現地の日本企業買収するケースであっても同様のものとなります。


更に、これを応用するケースの存在も忘れてはなりません。それは、例え国内買収案件の場合においてもその会社が海外子会社を保有しているような場合は、進出地に関わる現地の税務リスクと、その海外子会社を保有する日本企業(買収対象会社)の国内税務リスク、そして両国間に跨るような国際税務リスクの3方を考えなければいけません。

 

特に国際税務リスクは非常に難解な「移転価格税制」が筆頭になりますが、それ以外でも「タックスヘイブン対策税制」や「寄付金認定」を巡る税制がこれに該当することになって来ます。

 

一例として挙げると、「タックスヘイブン対策税制」では、海外子会社が現地の申告を適正に行っており、現地の専門から見て何のリスクもない場合であったとしても、その海外子会社が(香港やシンガポールのような)低税率地域(及び国)にあって日本の税制により求められる基準を充足できない場合には海外子会社の所得が株主である日本企業の所得に加算されてしまう(つまり、日本で日本企業が課税される)と言うリスクが存在しているのです。

 

以上、「買収形式」を軸として国際税務上の論点を簡潔にまとめて見ましたが、今後もこうした形式によって多岐化する項目について企業の税務担当者は十分な考察と慎重な姿勢を取ることがとても重要なスタンスであると言えるでしょう。

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