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「MPF」vs「長期服務金&解雇補償金」 この取り扱いにおける変更が企業に与えるインパクトとは?

更新日:2023年05月26日

2000年12月の設立以来、香港の年金システムはこのMPF(Mandatory Provident Fund=強制積立金)によって正式に制度化され、この地で事業を運営する企業は(一部の例外を除き)、基本的にこの制度を導入することが求められることになりました。

そして今までこの制度の中で変更され、また議論されて続けてきた部分というのは、(労使双方で積立られる)拠出額回りのことが中心であったと言えます。その理由はと言うと、積立額そのものが「少な過ぎる」と言うことで将来の年金受給額が満足の行かない水準で推移せざるを得ないと言う面であったり、積立運用主体となる各々のファンドを従業員側の採択によって行うスタイルとなっているため、結果として将来の受給額に大きな個人差が生じてしまう可能性があると言うことなどがあります。

実際、この2点については依然として(改善は施されたとは言え)解決する見込みが期待薄なのは事実であり、その意味では今後も何らかの手が加えられて行くことは間違いありません。

さて、前回と今回にわたって特集しているこのMPFの制度改訂(2025年に導入)ですが、その内容は一体どのようなものなのでしょうか?

通常、会社都合による人員整理(=所謂「解雇」)が発生する際において、雇用主側は当地の法律により縛られている支払い(①解雇補償金②長期服務金)のどちらかの義務を負うことになります。①と②の区分けというのは雇用日から起算して2年以内の解雇であれば①の解雇補償金が適用されることになり、逆にそれ以上の期間雇用していた場合は②の長期服務金が解雇対象者に付与されることになっています。

現行ルール上では、この一時金支払いについて雇用主はMPFの中で従業員のために積立を行ってきた雇用主拠出分の金額(および運用益)を、解雇発生のタイミングで使用する制限がありませんでした。そのため、企業はこの金額を利用することで、企業自体が人を解雇する際に被るキャッシュアウトの金額を抑制することが可能となり、結果として目的を達成しやすい(=解雇しやすい)状況にあると言えます。

ところが、今回の改訂により、MPF内で積立を行ってきた雇用主側の金額の使用に制限がかかる形式となるため、25年以降、人員削減の際は企業側としても簡単にできなくなる側面が現れます。なぜなら、その場合に発生する支払い(解雇補償金&長期服務金)の全額を企業側が新たに用意する必要が出てくるからです。

こうした企業側だけが不利益を被ることを避けるため、政府は負担軽減策として新ルール施行と同時に、その後(なんと25年間も!)救済措置が設定されることになりました。

その内容は、例えば解雇補償金(または長期服務金)の支払額が年間で50万ドル未満の場合、1〜3年目までは企業負担額が50%のみとされます。言い換えれば、この1〜3年目の間は政府が企業に対して助成金を提供することになります。

以後、4〜6年目は55〜65%(政府助成率は45%〜35%)、7〜9年目は70〜80%(政府助成率は30%〜20%)といった形で、徐々に助成率は上昇していきます(最終的に25年目になると企業負担額は100%になります)。それでも企業としては、政府からの助成金サポートの額を軽視することはできないでしょう。

いずれにしても、企業の経営には入口の面と出口の面が存在するのは常です。経営のポジションにいる者にとっては、このようなMPFの制度を十分に理解しておく必要があることは明らかです。軽い認識を持ったまま人員整理を進めてしまったりすると、実際のキャッシュアウトが予想以上に大きくなる可能性も含まれています。特に日本からの駐在者が現地法人のトップに立つ場合は、周知徹底することをお勧めします。

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