"金融"と言う観点から香港とシンガポール、そして東京の3つの都市の評価を行なうとした場合、各々は何れも豊富な経験をベースとした超一流のサービスや優秀な人材、更には"超"が付くほど巨大な取引規模等に裏打ちされた、「国際金融の桧舞台」と称しても決して過言ではないことでしょう。
今回のBlogでは、アジアが誇るこれらの3つの都市の比較を行い、また提供されているサービス水準やマーケットを彩る顧客の傾向性の見て行くことで其々が(共通性を奏でつつも)持つ「国際金融センター」としての特色と言うものを洗い出して行くことにします。
ではまず最初に「香港」について話をして行く事にしましょう。
香港はイギリスの植民地時代から金融の中心地としてその地位を確立して来ました。
当地の近代史を遡ると最もインパクトがあったのが、英国から中国への返還が行われた1997年7月のことですが、「一国二制度」と言う特殊な統治体制のもとで香港は高度な自治を維持し、法の支配と自由市場経済のスタイルを保ちながら当地やアジアの経済を牽引して参りました。
香港証券取引所(HKEx)は世界でも有数の規模を誇り、特に中国本土企業の株式公開(IPO)のメイン市場として重要な役割を果たしていることが特色であると言えます。また、アジアにおける外国為替市場の一大拠点でもあり、金融の透明性や規制の厳格さも多方面から高い評価を受けています。しかし、近年の政治的不安定さや、中国政府の影響力が増大してきてしまったことによって、ボリュームはさて置き、その強力なセールスポイントのひとつであった"国際性"と言う面ではやや影を落とす形となっています。
次に「シンガポール」について見て参りましょう。
シンガポールはその地域的な優位性と安定した政治環境を背景に、急速に成長して来た市場です。
シンガポール証券取引所(SGX)はアジアでの証券取引の中心地のひとつであり、特に外国為替取引やデリバティブ市場でその存在感を示しています。当地の金融政策は従来から非常に安定しており、透明性の高い市場環境が整っているマーケットですが、これらに加えて外国企業や金融機関に対する税制上の優遇措置も多く施しており、国際的な金融サービスの拠点としての近年、益々その存在感を強固にして来ていると言っても良いでしょう。また、当地は世界の資産管理市場においても重要な役割を果たしており、アジア地域の富裕層や機関投資家にとっては非常に魅力的な金融センターとなって来ていると言えます。
最後に我が国が誇る、「東京」です。
東京は日本の首都であり、長い間アジアの経済と金融の中心地としての地位を保ってきました。
東京証券取引所(TSE)は世界でも有数の規模を持ち、そこには多くの著名な日本企業が上場しています。日本の金融市場は非常に安定しており、強固な法制度と規制環境が整っていますが、アジアの他の金融センター(香港やシンガポール)等と比較すると、言葉の障壁や文化の違いと言った基礎的な要素が原因となって、国際的な企業や投資家にとってアクセス面で足を引っ張ることがあります。また、日本経済全体の長期的な停滞が東京の金融市場に影響及ぼしているとも言え、安定的である一方で大きな変化が期待し辛いと言う相反する面を持つ市場と言えるでしょう。
以上、簡単ではありますが、アジアを代表する「金融センター」をご紹介させて頂きました。
単純に比較をすると、この3つの中で最もバランスが優れていそうな都市はシンガポールとなり、安定性を重視するのであれば東京が有力となるでしょう。そして(中国の後ろ盾を全面に受ける)香港はアグレッシブな投資向きで調達額を優先する際は最有力と言う特色が見えて参ります。勿論、それぞれには一長一短な面が存在するのは事実ですが、投資家は各々が描く目的やゴールに応じてどこでIPOを実現するのかを検討することになりそうです。
さて、これら3つの都市の評価、貴方だったらどのような判断を致しますか?