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トラブル事例 

偽メールを利用した香港への送金依頼詐欺に対して日系企業が取るべき対策

更新日:2019年04月11日

偽メールを利用した香港への送金依頼詐欺に対して日系企業が取るべき対策
偽メールを利用した香港への送金依頼詐欺ー被害内容の詳細
偽メールを利用した香港への送金依頼詐欺の分析

偽メールを利用した香港への送金依頼詐欺(海外企業と取引のある日本企業向け)の、日系企業が取るべき対策を以下に挙げます。

(1)事前予防策
代金の決済、インボイスの送受信等を担当している担当者が、イレギュラーな送金方法の依頼を相手方の外国取引先(と称するメール送信者)からメール等の文書で受けた場合、外国取引先の実在の担当者に必ず電話等、口頭でも確認し、インボイスの内容・送金先、依頼内容が真に外国取引先のものかを送金前に必ず確認するよう、マニュアル化することを推奨します。


(2)事後対応策
実際に被害にあった企業は、送金後に外国取引先との連絡で間違った送金先に送金したことを初めて知った。ここにおいて考えられる対応策は次の通りです。

判明した後すぐ、送金元銀行、送金先銀行に連絡して送金状況を確認し、いまだ着金未了なのであれば、即時に送金指示を取り消して、相手方(口座保有者)の口座に入金(着金)されるのを阻止することが肝要です。

もしも入金(着金)済みである場合、まずは警察に連絡すべきですが、例えば日本から香港の送金の場合、必ず日本と香港それぞれの警察機関に連絡し、このような被害にあったことを報告することが必要です。

送金先が香港の銀行口座である場合、香港警察は被害状況の報告を受けて、対象となる銀行口座の凍結指示を銀行に出すことができます。凍結指示を出してもらうためにどのような書類が必要になるかは香港警察に確認を要しますが、近時同じような事案が相当数あると思われ、香港警察も事情をすぐに理解して即時に対処してくれるようです。

送金した金銭が対象となる口座からすでに流出している可能性もあり得ますが、現在どの程度の残高があるか、事案によっては香港警察が銀行に確認してくれる場合もあると聞いています。

最終的に金銭の返還を受けるためには香港の裁判所で民事裁判を起こさねばならないが、そのためには口座に残高があること、口座の取引を凍結させておくことが大前提となるためこの手続きを発覚後即時に取ることは非常に重要です。


(3)香港での民事裁判について
香港で民事裁判を起こす場合、口座保有者である香港法人を被告として民事裁判を起こすことになります。口座保有者は犯行グループと必ずしも同一人物(団体)ではない(というかほとんどはそうでない)ため、口座保有者が民事裁判においてどのような対応をするかは確実なことは言えません。

仮に口座保有者が何らかの理由で当該口座の残高は自らが正当に受領して保有するものであり、被害企業に対して返還すべきではない、という反論をしてきた場合、被害企業は民事裁判で即時に勝訴判決が取得できるとは限りません。

この点、香港の民事裁判は、敗訴した当事者が裁判費用のみならず勝訴した当事者が負担した弁護士費用も含めて負担しなければならない制度となっています。また、香港の弁護士費用のルールは日本のそれと異なり、訴額(訴えの請求金額)に応じて比率で計算する着手金・成功報酬の形式ではなく、稼働した時間の長さにアワリーレートを乗じて計算する形式です。

さらに、民事裁判で被告が真剣に争ってきた場合、ソリシターとは別にバリスターを雇わねばならないケースも出てくるため、バリスターの弁護士費用が追加で発生してくる。従って訴額が比較的小さい事件でも裁判の終結に時間がかかれば、その分弁護士費用が高額になりえることに注意を要します。

前述の通り、民事裁判において仮に敗訴するようなことがあれば、自らが負担した弁護士費用のみならず、相手方の弁護士費用(バリスター費用も含む)も負担しなければならないため、被害金額とは別にさらに大きな金額の負担をしなければならないリスクがあることは、被害企業が裁判をするにあたって十分に念頭に置く必要があります。

なお、香港の民事裁判で勝訴判決を得ることができれば、既に凍結した口座に残っている残高を強制執行により回収することができます。

逆に凍結をしていない場合、仮に勝訴判決を取ったとしても口座に残高が残っていなければ強制執行が空振りに終わり、被告の保有する別の資産を検索してそちらに強制執行をかけなければならないことになります。

この観点でも、発覚後即時に香港警察に報告して口座凍結の措置を講じることが、被害回復のために非常に重要となります。

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