CCM香港 スタッフブログ|香港法人、オフショア法人を設立・仮想通貨の活用するための最新情報

【 レンタルオフィス・スペース事件 】

海外子会社、特に香港のような軽課税地域に拠点を設けますと日本の税制で言うタックスヘイブン対策税制(TH税制)の範疇が現実味を帯びて参ります。上記のタイトルにございますように、2012年10月にシンガポールを舞台にしたある訴訟に関する判決が申し渡され、結果、税務当局は敗訴したケースが御座いました。
そのケースが俗に言う、『レンタルオフィス・スペース事件』と今では呼ばれている税務裁判です。

この事件の設定条件は以下の通りでした。

【 事件設定条件 】
1) 日本の精密部品製造会社の役員が個人の会社をシンガポールに設立した(持株比率:99.99%)
2) この個人会社は上記1)の日本の精密部品製造会社の関連会社(タイの法人)の製品をアジアに点在する顧客に卸売販売していた
3) シンガポールの個人会社は当地のレンタルオフィス・サービスを行う会社と業務委託契約を締結して以下を”調達”していた

◆  調達内容  ◆

① 事務所設備の賃貸
② 業務オペレーション代行サービス
③ 営業マンの派遣
④ この個人会社の株式保有(残りの0.01%)及び同社役員職

こうした形で対TH税制用のストラクチャーを構築していましたが、実体としてはこの精密部品製造会社役員は殆ど日本在住であったり、レンタルしたオフィスの風情は机1台とパソコン1台がようやく入る程度のオフィススペースだけでございました。

こうした事に着目した国税局は、これは実態基準と管理支配基準と言う条件2点に於いてTH税制の適用除外項目を充たしていないと判断、この役員らを相手取って裁判へと発展した訳です。

結局、この国税局のアピールは東京地裁と東京高裁でも敗訴となる訳ですが、その裁判所は棄却の理由として以下の点を指摘しました。

◆ 実体基準 ◆
a) この”最小の”ビジネス単位とも言える状態(固定資産は僅か机&パソコン各1台のみ)であっても、規模が大きくない卸売業を行う事は充分可能

◆ 管理支配基準 ◆
a) 派遣社員に販売や仕入れを行うだけでなく、一定の裁量権限が与えられていた為、この個人会社が敢えて直接雇用をする必要なし
b) 指示命令系統が派遣社員に対して④で株式保有したレンタルオフィスの会社役員が行っていた。

 - ビジネス, 日本, 海外移住・国際

↓ブログ村参加してます。応援よろしくお願いします!↓

にほんブログ村 海外生活ブログ 香港情報へにほんブログ村 経営ブログ 海外進出支援・海外支援へ

  関連記事

no image
海外取引先に何らかの支払いをする場合に留意すること

日本の「源泉徴収」というのは個人となるとイメージ的に“給与天引き“されているとい …

3d people - man, people push up word "tax"
【日本の税制調査会の動向(2)】

今回は『脱税』と『脱税回避行為』に関してご案内です。 ◆『脱税』 『脱税』とは、 …

3d people - man, people push up word "tax"
【香港ワンポイント -香港法人に日本の税金?】

【 質問 】 日本法人や日本の居住者が株主となっている香港法人の所得について、日 …

no image
2017年訪日外国人の動向

毎年、日本には沢山の観光客やビジネスマン達が訪れます。主としてアジアからの来客が …

no image
世界(アジア)は何故、このBEPSプロジェクトを推進することになったのか?ー1

昨今の租税を巡る国際的なムーブメントの中で特に重要なものと考えられている動きと言 …

no image
【 海外一流大学への”パスポート”たる国際バカロレアとは? 】

富裕層や起業家の方々を問わず、香港やシンガポールなど海外に移住をして来た日本人の …

no image
【タックスヘイブン対策税制 実体基準の判定について】

香港のような軽課税地域では常に日本の税法、特にタックスヘイブン対策税制の影響下に …

国外財産調書
国外財産調書、第2回目の提出数は?

国外財産調書、第2回目の総提出件数は提出は8,184件 国税庁は2015年10月 …

no image
平成30年4月1日以降開始年度に影響を及ぼすタックスヘイブン税制の改正

今年の12月14日、国税庁から税制大綱が発表されました。毎年、この時期になると翌 …

no image
本社と海外子会社の間にある“溝”

昨今、『海外進出』の際の問題点の中には海外子会社に於ける危機管理対応があります。 …